鳴かぬなら鳴かせてみせようダッフル

ダッフルはグローバリズムを超える！？

-A side-




  
「うわっすげー風！！」





強い潮風が砂を道連れにして宙を舞い、俺の目を直撃した。






「いてぇ！！しょう・・・ちゃん・・・・目・・・いた・・・・」




そう言うと、しょうちゃんはすぐコートを持ち上げ２人の頭に掛けてから
目を押さえた俺の手をどかし顔を覗き込んでくる。





「どれ？大丈夫」




澄んだ大きな瞳は暗闇でもよく見えた。
光なんてどこにもないのにキラキラ揺れている。




やっぱりその瞳は飾り
俺の心の中は見えないんだ。





こんなに長い時を共に過ごして
今もこんなにも近くに居るのに
俺を映したしょうちゃんは、いつもと変わらない。





全然見えないんだね
全然分かってないんだね
怒りにも似たおかしな感情が俺の中をかき乱す。





けど至近距離で、しょうちゃんに見つめられれば嬉しくて幸せで
もうなんでもいいやとも思えてしまう。




もう自分がどうしたいのかも分からなくなってきていた。




俺の気持ちに、しょうちゃんが気が付いてそれからどうするの？
困るのはお前だろ？
そう言ってる自分も居る。




この気持ちは隠さなくちゃいけないのに
気が付いて欲しい




気が付いて欲しいのに
気が付かれるのは怖くて





何がなんだか分からない感情が波のように押し寄せる。





気が付けば
しょうちゃんは離れていっちゃうのに・・・・・・・





同じ夢に向かう俺達は、愛だの恋だの好きだの
そんな甘ったるい事を口にしてる場合じゃない。




しかもメンバーで同性
問題外だろそんなの。
論外。誰も認めてはくれない





自分で認めるのもやっとだったんだ
他人が認めてくれる訳がない。





このままでいい。
こうしてノリで触れられるんだもん
しょうちゃんの近くに居られるんだもん
仲間の１人でいいじゃん
いつだって近くに居れるなんて最高の幸せだよ
乱さずアンパイでやっていこう





いい




このままで・・・・・・
このままでも幸せだよ・・・・・・






「雅紀？」






しょうちゃんの言葉にハっとして気が付いた時には
俺は、しょうちゃんの愛くるしい撫で肩に頭を乗せていた。





えぇ？！！！
何やってんだ俺！




ヤバイ・・・・・・
何してんだ
何をやらかしちゃってるんだ！！




やべーやべー
心臓の音も・・・・ハンパない・・・・・
しょうちゃんに聞こえちゃうよ！！




落ち着け！！
こうなったら寝たふりでもするしかないな・・・・・




さすがにコレは・・・・ノリじゃねぇ
ノリで肩に頭乗せて・・・・・寄り添えられるかっつーの！






「雅紀・・・・・どうした・・・・・・・寝てるの？」





寝てます
寝てますから
もう放って置いて！！




あーーーーーーー神様
どうかどうか心臓の音漏れしてませんように。





しばらく様子を伺い、俺が動かないのを確認すると繋いでた手に力が入った。




しょうちゃんに強く握られた手は熱くて
何度もぎゅっぎゅと握り返される。





気のせい？
気のせいなんかじゃない。確かに強く握られている。




少し手の力を抜くと、指を絡ませるように恋人繋ぎをしてきた。




ヤバイ・・・・嘘でしょ・・・・泣きそう　




このまま・・・・・・一生眠ってたい



だって　もう離れたくないんだもん
ずっとこのままで居たいよ



しょうちゃんの体温と甘い香りを感じられるこの距離のまま
掴んだ手を離したくない





離さないで、しょうちゃん




お願いだから俺を好きになって下さい。




お願い・・・・・・




俺の・・・・・夢・・・・・・





「雅紀」





しょうちゃんの低くて甘い大好きな声

















「俺の夢は、おまえ」












風が強くて
周りの雑音は結構な音量だったけど





ここには２人しか居ない





ダッフルコートの中では
２人の世界





愛する人の声だってよく聞こえる。





今・・・・・・・・





俺が心の中で思ってた事を





同じ事を




今・・・・・・確かに




聞こえちゃったよ？




しょうちゃんの心の声？




頭に、しょうちゃんの唇の感触を感じた時に全てが終わった。




もうこれ以上嘘は付けないと




愛する人の手を強く握り返した。